自動車窃盗自体は昔からある犯罪だが、近年は分業化、計画性が強まっており、ビジネスの様相を呈している。
事件の発端となることが多いのが、盗難車を加工・保管し、密輸出するのに使われる「ヤード」と呼ばれる作業場からの発注だ。
ヤードを仕切る業者が、窃盗団とつながりのあるブローカーへ「この車がほしい」と依頼する。ある捜査関係者は「人気なのはトヨタ車。最近は『××という車のこれがほしい』などと、型式まで指定している」と打ち明ける。
ブローカーは窃盗団の指示役へ相談し、指示役は実行役や盗難車の運搬役などを使いながら、犯行に及ぶ。実行役はCANインベーダーなどを駆使して車を盗むと、離れた場所のコインパーキングなどに盗んだ車を駐車。運搬役が回収し、車をヤードへ持ち込む。
複雑な分業化からは、捜査を攪乱する狙いも透ける。捜査幹部は「盗むところをはっきり防犯カメラで押さえられていなければ、犯罪としての立証が難しい。盗むところからヤードへ持ち込むところまで(同じ犯人が)全部やっていれば、計画性が明白なのだが…」と唇をかむ。
どうすれば被害を防げるのか。捜査幹部は「CANインベーダーをつなぐ部品は車に数カ所あるが、車外からアクセスしやすいのは助手席側のものだけ」として、助手席側のスペースを駐車場の壁などに詰め、駐車することを推奨。